基本調整=キャリブレーション?!

キャリブレーションとは、設定値と実効値が誤差なく正確に推移・機能するための補正といった意味を持ち、工業系の技術屋さんなどが良く使う専門用語です。「楽器の基本調整」はこのキャリブレーション要素が非常に強いと考えています。これには二つの側面があり、適正に調整セットアップされた楽器は想定したトーンと音階の発音が容易になり、意図した音を直感的に狙えるので演奏ストレスが大きく軽減されます。と同時にもう一点、調整によって本来必要とされる理想的な鳴りや音像バランスへ近づけることで、その先の入力機器(エフェクターやアンプ、D.Iを通したコンソールシステムへのダイレクトMIX等)へ過不足の無いニュートラルな状態で音声信号を送れるようになります。

これは、自分自身での音作りやモニタリングのしやすさが改善するとともに、第三者に対して渡す音像の把握を容易にします。音のベクトルやエネルギーが自己完結だけで終わらないトーンは経験上良い結果に結びつく傾向が強く、このような調整を講じることができて初めてその楽器のポテンシャルを発揮できる状態となります。

音楽性や演奏者の主観・個性を反映させる調整と、本来あるべき音像に着地させるための基本調整は全く別物と考えています。楽器として正しく機能し鳴る、鳴らせられる状態になっているかどうか?ここのキャリブレーションをクリアしたうえでキャラクターや方向性を考えるステップに入ればめざすトーンに圧倒的にたどり着きやすくなります。

当工房で行なっている調整・リペアや扱っているケーブル類、システムセットアップは常にこのテーマを意識して行っています。本来あるべき状態に楽器や機材が補正されたとき、それまで音作りや機材選択に四苦八苦してたことが一気に解決することも珍しくありません。